詩集と死臭-00.

 彼女に振られた役割は、ただのティンカーベルである。

 ネバーランドの妖精は、信じられない事によって姿を消す。
 その姿は美しい。消える姿は美しく、消える事こそ自然である。
 これぞ真理と呼べるのではないかと、思う。
 その程度を真理と呼ぶなと、仲間達からは笑われた物だが。
 お前は夢を見すぎるのだと。

 それでも良い、彼女を愛す。

 ティンカーベルにはピーターパンが必要だ。
 彼がいなければ、彼女の存在は信じてもらえない。
 それは即ち、彼女の死。
 彼女の存在は希薄である。
 ピーターパンが必要だ。

 ロストボーイズは未だゆりかごの中に有る。
 無理矢理にでも、落す他無い。
 ケンジントンは此処である。

 私は只の、執筆者。
 愛しい彼女は、ティンカーベル。
 彼女を生かす、其れが手段。
 真理の探究こそが目的。


――とある研究者の手記。